「ぼったくられない」がん検診


がん検診を受けたことがあるでしょうか。

2人に1人ががんになる時代になりましたので今では「がん検診」と検索するだけで色々と出てきます。病院からチラシなどをもらった方も多いと思います。
チラシがオススメする「良い」がん検診を選ぶと1回10万円程度してしまい、これ毎年受けるの?と辟易された方も多いかもしれません。私もそのお金と時間で温泉旅行に行く方が、寿命が伸びるんじゃないかなと思っています。

ただ、実際に受けた方が良い検診は存在します。基本は厚生労働省が推進して市町村が実施していると思いますが漏れているケースもありますので確認していきましょう(それでも無料かそれに近い料金でできると思います)。また自分のリスクを知っておくと効率的に対応できますのでがんを予防するたった3つの事でおさらいしておいて下さい。今回は必要な検診と不必要な検診の見分け方を説明していきたいと思います。

1.何故がん検診が必要なのか

まず「がん検診」と会社などで受ける「健康診断」の違いから見てみましょう。
健康診断:健康であるかどうかを判断。生活習慣病などの傾向を掴んで早期に是正するのが目的
がん検診:がんがあるかを判断。がんで寿命より早く死なないようにするのが目的

健康診断はその通り健康であるかを確認します。
それでは何故がんを特別にみるかというと40才〜89才までの死因の第一位である事と、早期で見つければ障害が少なく完治しやすいという特徴があるからです。実際に毎年100万人近くの人ががんと診断されています。
人間ドックというのも聞いた事があると思いますががんの有無+他の病気の有無+健康診断と思えば良いと思います(どこまで調べるかによりますが)。自分の特徴を知っておくという点で一回くらいはしても良いと思いますが、毎年受けたりするのは時間とお金と体の無駄になる事が多いです。

2.あらゆる検査は害である。

ここを意識しておくと医療リテラシーがグッと高まります。当たり前のことですが健康のために生きている人はいません。「健康のためなら死んでも良い」と言いそうな方をたまにお見かけしますが、「健康でいたい」とは思ってもあらゆる事を犠牲にしてでもという方はなかなかいないと思います。検査は採血検査のような簡便な検査であってもそれを行うことにお金と時間を消費しますし、体にとっても内出血などの(軽微ではありますが)害があります。CTであれば何度も繰り返してとる場合は被曝して発がんのリスクがありますし、造影剤を使った場合は腎臓を悪くしてしまう事があります。胃カメラのようなありふれた検査であっても胃に穴が開いたりして10万人に1人は死亡しています。精密検査になればなるほど費用・時間・体の危険度のいずれか、あるいは全てが上昇する傾向があります。病気の人を検査する分には治療法を見極められ有用性がかなり高いことがあっても、健康な人にやったら害でしかないという事が往々にしてあります。

3.がんを100%見つけるのは害が非常に多い

これが理解できると下手な医療者よりも医療リテラシーが上回ります。まず、がんを100%発見できる検査はありません
インフルエンザで病院に行くのは時代遅れ」でも述べましたが、インフルエンザの検査ですらインフルエンザにかかった人の3割を陰性と判断します。インフルエンザの人をどれだけ見つけられるかという値を感度と言いますがこの場合は70%となります。実はこの感度を100%にする事は技術的には可能です。でもそうすると今度はインフルエンザでない人を陽性と判断してしまいます(偽陽性)。ほんの少しでもインフルエンザの気配があれば陽性と判断させてしまうとインフルエンザでない人にも反応してしまうという事です。インフルエンザでない人をちゃんと陰性と判断できる割合を特異度と言いますがインフルエンザキットの特異度は現在の設定では凡そ95%程度と優秀です(間違って陽性と出るとタミフル処方され害が多くなるので当たり前ですが)。インフルエンザの多い冬場だととりあえずこの感度・特異度でOKです。

がん検診でも同様ですがさらに2つの点でがんを検出するのを難しくしています。
がんはもともと正常細胞から徐々に変化しているもので境目が難しい点
・健康な人への(特定の部位の)がん検診では(その部位の)がんではない人が圧倒的多数である点

1点目は以前の記事でも述べた通りです。どこからを陽性にするか悩むことがあります。
2点目は夏場でのインフルエンザ検査を想像してもらえれば良いと思います。ただの風邪がインフルエンザである割合を100人に1人(1%)とすると、10000人に検査をしたらインフルエンザの人100人のうち70人が陽性と出て、残りのインフルエンザでない人495人(9900人の5%)が陽性となります(特異度95%の優秀なキットの場合でも)。計565人(本物のインフルエンザは70人だけ)にタミフル処方されると思うとゾッととしますね(副作用ばかり目立ちそうです)。
がん検診の場合でも、良性(がんではないもの)を陽性にしてしまった場合、生検(体に針を入れたりして組織をちぎってくること)などの体にダメージが大きい精密検査も必要になり(その分、入院費用や拘束時間が多くなる)色々と大変になってしまいます。
さらにがん検診では一度に全ての臓器をみることは基本できません。x線なら肺、便検査なら消化管と行った具合です。毎年100万人ががんになると言っても日本の総人口が1.3億人だとすると毎年新たにがんと診断されるのは100人に1人以下です。臓器別となればさらにその割合が減少します。がんになりやすい高齢者に絞ってみても部位別では全て100人に1人以下になりますので検査の感度が高いだけでなく特異度もよっぽど高くないと偽陽性が増えて無駄な追加検査ばかりになってしまいます。

なのでここまで理解できた方は巷にあるような検査(血液がんマーカー測定:約2万円程度。良く見積もっても感度80%特異度80%程度)が何故ただの無知につけこんだぼったくりであるのか理解できると思います。また後で出て来る推奨の検診に年齢制限があるのかわかると思います(年齢が高くなればなるほどがんになる確率が高くなるからですね)。新たな検査があっても一度落ち着いて感度・特異度・有病率をみておくとそれがまともな検査なのか判断できます。ちなみに後に推奨で出て来る便検査は(ある調査によると)感度95%特異度95%で検査による体へのダメージもなく、簡単で時間も費用もかからない、検診に向いている良い検査であると言えます。100人に1人以下しか新たにがんと診断されないと言いましたが、高齢になればなるほどがんになる確率は高くなりますし、毎年40才-79才まで受ければがんが見つけられる確率は40倍になります(最終的に2人に1人は一度はがんと診断されます。)のでがん検診は毎年or2年毎受けるのにはそれなりに意味があります。

ここまで大事な3つの点を述べましたが
結局がん検診に対してどういう態度が良いかが一番気になるところだと思います。

私が推奨する最もお得(合理的)な方法は

推奨されたがん検診は受ける。あとは潔く諦める。

これが一番色々とお得です。例えば便潜血検査を受けるだけでも大腸がんによる死亡率が60%減る事が証明されています。PETを含めたがん検診を受けると一日中拘束され、良性のものを陽性とされたら生検などで1週間ぐらいつぶしてしまうかもしれません。費用もばかになりませんし、生検で感染や炎症を起こしたら目も当てられません。それでもがん死が減るのならという気概なら止めはしませんし、一回くらいは良性引っ掛ける可能性も含めて自分の体を知るという意味で検査してもいいかもしれません。

諦めることを実行するにあたり一番大切な心構えがあります。

がんだとわかったら速やかに標準治療(科学的にベストとされる治療)を受ける。

小林麻央さんの事が盛んに報道されていた時は若い20代-30代の方が乳がん検診に殺到することがありました。(芸能人だったとはいえ普通の個人でもありますので)詳細を追う事はしません。また彼女の人生を彼女の判断で生きた事に対して敬意を表しますが、私たちが彼女から学ぶ事は早い段階で乳がん検診を受ける事ではなく、乳がんとわかったら速やかに乳がんの標準治療を受けることだと思います。すでに述べた通り、がんであることの診断は難しいです(際どい変異を容易にがんだと診断してしまえば不要な害を受ける方が急増します)が、わかった時点で標準治療をすれば多少進んだとしても乳がんの場合であれば凡そ9割は完治します。(憶測に過ぎませんが)傷跡もなく後遺症もなく治ると言われれば若い女性ならそちらに傾く気持ちもわからなくはないです。ただそんなうまい話があれば保険適用されています。少なくとも先進医療(証明はされていないが、効果がある可能性がある治療)に入ります。その方が確実に業者(治療開発者)にとって儲かるからです。一般のクリニックの保険適用されていない治療はそれだけでかなり怪しい事は理解しておくと良いと思います。またがん治療は後遺症が少なからずある重要な治療なので信じられそうなところにセカンドオピニオンを求めても良いと思います(セカンドくらいであれば治療を待っても良いと思いますし、「あちらの医師にも聞いてみて後悔しないようにしたい」と言えばまともな医師なら快諾してくれると思います。)。

少し脱線しましたが以上、ぼったくられない3つの心得+心構えでした。

最後になりましたが以下が推奨されるがん検診です(国立がん研究センターHPより)。
(色々とニュースを騒がせているがん検診の新しい血液検査や尿検査はまだはっきりとカタチになっておらず、本当に良いものかどうかもまだわからないので、現段階ではこれがベストです。)

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