がんを予防するたった3つの事

日本人死因の第一位「がん」
3人に1人はがんで死亡し、2人に1人はがんにかかります。

国民の関心は高くなり、巷には有象無象の「がん情報」が溢れていますが、不安を煽るだけで見た人の生活の質を下げているものが少なくありません。また「これを食べればがんにならない」とかは証明されたものはありません。(コーヒーの摂取は肝臓・子宮・大腸がんなどの抑制に効果があることは示されましたが、一方で不眠や膀胱がんを惹起することも指摘されています。黄緑色野菜はがんリスクを減らしてくれますがバランスの良い食事と思えば当然です。水素水は効きません。)

そもそも何故がんが起こるのかという話ですが、大雑把に言ってしまえば組織へのダメージの蓄積で、おかしくなってしまった細胞が暴走を始めてがんになります。なので、強い紫外線にあたり続ければ皮膚がんになりやすいですし、アスベスト(石綿というトゲトゲの物質)を吸えば肺がんになりやすいのは分かりやすい例だと思います。組織へのダメージの蓄積が原因だとわかると、第一のリスクが加齢であることは納得いただけると思いますし、長生きすれば完全に防ぐことは無理であることもご理解頂けると思います。よくがんは遺伝だと思っている方も多くいらっしゃいますが、遺伝が原因とはっきりしているのは全体の5%程度です組織へのダメージがほとんどの場合の原因です。

なので年を重ねる以上はがんに絶対ならないようにすることは無理ですが
以下の3つのことを気をつけて頂くだけでがんになるリスクは半分になります

1、感染症
意外かもしれませんが女性ががんになる第一の原因は感染症です。また男性のがん患者さんの2割以上の方も感染症が原因となっています。がんを引き起こす感染症は決まっていて除菌&ワクチン&感染防御をするだけでグッとがんになる確率が減るのでかなりリーズナブルです。
①ピロリ菌:胃の中に住んで、胃に慢性炎症(胃にダメージを与え続ける現象)を起こします。日本人は最も胃がんになりやすいのですが原因の一つがピロリ菌です。日本人の2人に1人は感染していて年齢が高いほどその率は高くなります。ピロリ菌は胃にいると厄介ですが、カワイイ名前のイメージ通り抗菌薬+αで簡単に除菌出来ます。除菌するだけで日本人の一番数が多いがんである胃がんの3-4割は防げます。まずはピロリ菌の検査をしてみましょう。もしすでに胃の不快感などがある場合は胃カメラのできる医療機関で直接胃をみてもらいましょう。
②B型肝炎・C型肝炎:肝がんの8割程度がこれらのウイルスです。どちらもウイルスが潜伏して(機序は違いますが)肝臓にダメージを与えます。C型肝炎ウイルスの検査法が普及したのが1990年代でそれ以前に輸血などをした人は感染のリスクはあります。現在日本には200万人程度の感染者がいるとされています。チェックは受けて必要なら治療を受けてください。またB型肝炎ウイルスにはワクチンがあります。ちなみにどちらも血液感染・性感染をするので、特に(感染の有無を)知らない人との性交渉時はコンドームをつけましょう。
③HPV(子宮頸がんウイルス):本当はピローマイルスの略でHPVですが覚えて頂くためにこの表記をしています。HPVは性感染症の一つで子宮頸部に(実は口の中の組織などにも)感染しダメージを与え続けてやがてがん化させます。このがんの特徴は若いうちに発症することで、若い女性が妊娠出来なくなってしまうことです。子宮頸がんワクチンを打つだけで7割程度の子宮頸がんを防ぐことができます。日本では一度接種したこどもに痙攣などが出現したことが過剰に報道され、積極的なワクチン推奨が中止になっています。厚生労働省は被害を訴える側にかなり寄り添う形で案内用のリーフレットを出していますが、それでも失神など起こる割合は1%以下の「頻度不明」としています。非科学的な視点でのワクチン推奨中止は外国からはかなり奇異的な目で見られています。こどもが中学校に上がる頃には親の責任として必ずワクチン(HPV予防)とコンドーム(性感染症予防)については恥ずかしがらずに伝えましょう。そして残りの3割も逃さないように20才になったら2年に1度の子宮頚がん検診も自分の責任で受けましょう。子宮頚がん検診はがんになる一歩手前の状態(前がん病変)を発見してくれます。

2、飲酒
残念ながら実はアルコールもがんを発症させます。例えば1日2合以上飲む習慣を持つ人は通常の人よりも1.5倍がんになりやすくなります。ただお酒は困ったことに「美味しい」という代え難い利点があります。それぞれの料理に合わせられたお酒は最高で、これを食せるならがんになっても良いという全てを台無しにする魔力さえあります。またお酒は人類の文明の発展と密接に関連しており(参考:「歴史を代えた6つの飲み物」)なかなか生活から切り離せません。こうなると禁酒はあまり現実的な方法ではありませんのでうまく付き合える方法を探します。
A,1週間で日本酒7合(ビール3.5L)までならOK
飲酒による死亡率を調べた調査では毎日1合(ビール500ml)飲んだ群と、1回量は多いが週に1~2回で計7合/週未満群では死亡率は変わりません。毎日飲む人は多いですが、よく聞くと毎日飲む理由が不明です。美味しい料理や友人とくだらない話をする時ぐらいで良いのではないかと思います。その場合は1日量は1合を超えてしまいますが1週間の総量の7合を超えなければ大丈夫です。確かに飲まない群よりかは1.2倍程度はリスクはあがる可能性が示唆されていますが、毎日2合を超えるような酒量になると1.5倍を超えるのが確実になってきます。
B, 塩・糖を控えて野菜をとりつつ運動する。
飲酒は胃、肝臓、大腸、乳房、口腔、咽頭、喉頭、食道のがんのリスクを上げる
ことが示されています。逆に言えばこれらの臓器へのダメージの蓄積がなければがんを発症させません。塩は日本食に多く含まれ、胃癌の強力なリスク因子です。ただ(スナック菓子やラーメンの汁を避ける・漬物をやたら食べない・醤油は飲まない)ぐらいのマイルドな方法でもある程度避けられます。合わせて高血圧も避けられます。また飲酒は糖尿病のリスクを高めます(特にBMI<22の男性)。そして糖尿病は肝がん・大腸がんのリスク因子です。また糖尿病は血管をボロボロにしてあらゆる臓器のトラブルのもとですので絶対に避けたい疾患の一つです。糖を食べ過ぎると過剰カロリーの原因になり糖尿病を発症しますので気をつけましょう。また運動が糖尿病のリスクを下げてくれます。そして運動によって大腸がん、乳がんのリスクが下がります。また野菜・果物は糖尿病と食道がんのリスクを下げてくれます。この生活だと肥満も改善します。肥満も食道、膵臓、肝臓大腸乳房、子宮体部、腎臓のがんリスクですのでそれらも下がります。
C, 喫煙しない
これを言うとABの議論はなんだったのかとなりますが、アルコールは「男性喫煙者のがんリスクを高めるだけ」との日本の研究もあります。ただ非喫煙者でも多少リスク(10%程度)は高まっているのが示唆されていたり、女性に関しては数が少なくて統計上の差が出ていなかったりとやや研究の質に問題があります。ですが喫煙+飲酒の組み合わせは最悪であることは確実です。口腔、咽頭、喉頭がんにおいてheavy smoker&drinkerのリスクは200倍です。食道がんもそこまではいかなくても喫煙だけでも5倍以上高まりますのでアルコールも飲む場合はかなりのものです。喫煙しないだけでも飲酒によるリスクがグッと下がります。このABCで飲酒によるがん発症のリスクを抑えたことになります。うすうす気づいた方も多いと思いますががんに限らずABCで日本の死因の70%を占める疾患群のリスクもかなり低下します。

3、喫煙
喫煙は男性のがんの原因の3割を占めます。組織にダメージを与える凶悪な物質を供給し続けるので当然と言えば当然です。がん以外の疾患の原因にも勿論なり、万病のもととなっています。あまりにも毒性が強いためお酒のような代替手段でのカバーが効きません。ただ喫煙者も体に悪いことは理解はできていますし最近は非喫煙者へのマナーも守られるようなってきました。「体に良いことをすることだけが人生じゃない」という言葉も一定の説得力を持ちますが、ただその実は「タバコ会社に搾取され続けるただのニコチン中毒者」である可能性は非常に高いです。(がんとの戦いはタバコ会社との戦いでもありました。「がん 4000年の歴史」に詳しいです。名著です。)逆に言えばニコチンを適宜補充しながらだとタバコをやめられる可能性が高いです。クリニックで用いられる具体的な禁煙の方法はこちらです。禁煙でがん発症リスクは10年間で半分になりますが、がん以外の呼吸器疾患や循環器疾患はたった1年でも大幅にリスクが減ります

また受動喫煙の問題もあります。受動喫煙による医療費は3200億円にも昇り、非喫煙者から見ると喫煙者は「ただの公害」以外の何者でもないのですが、禁煙には周囲の協力も大事になってきます。一緒に禁煙のページをみて温かく応援してください。

以上、がんを予防する3つのことでした。「感染症対策」をして「禁酒をする」or「バランスの良い食事・運動」して「禁煙する」、改めて確認すると納得ですね。
(「がん 4000年の歴史」は正しい医学と歴史と政治を美しい文学で表現した傑作でしたので改めて以下にご紹介します。タバコを吸っている方は読めばきっと吸うのをやめたくなるかと思います)

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